税に関するコラム
不動産収入を内部留保して「退職金」でもらうと、本当に節税になる?
今回のテーマにもなっている内部留保についてですが、内部留保というのは利益から税金や役員報酬などの社外流出分を差し引いた蓄えのことをいいます。そのため不動産収入を内部留保して退職金として受け取るとなると役員報酬をもらわない方がより多く内部留保に回すことができ最終的にまとまった額を退職金として受け取ることができます。しかし役員報酬を無くすと法人にそれだけ利益が残るという事になりますので法人税がそれなりに高くなってしまいます。これを防ぐために倒産防止共済に加入するという方法があります。倒産防止共済とは取引先の事業者が倒産した際に経営難に陥らないようにする制度で、掛け金が最大月額20万円、総額800万円です。そして、この掛け金は全額経費になるため節税に繋がります。さらに3年4カ月以上掛けて解約すると全額が返金されるため退職金を出すタイミングで解約すれば退職金の資金にもなり退職金が解約時の収入を上回ると、その分の法人税がかかりません。
ここからは本題に入り、不動産収入を個人保有した場合と退職金として受け取った場合について比較していこうと思います。今回は以下の条件で計算していきます。
・年収600万円(手取り459万円)
・不動産利益200万円/年(手取り162万円/年)
・20年間不動産を所有
まず個人保有の場合ですが、不動産収入の手取りは毎年162万円だったことから総額3240万円受け取っている計算になります。(売却益は0とする)
次に退職金として受け取る場合です。倒産防止共済に毎年40万円掛けたと想定します。
年間の内部留保は以下の計算により119万円となります。
不動産利益:200万円
倒産防止共済:40万円
利益:160万円
法人税:41万円
内部留保:119万円(160万円-41万円)
そうすると20年間で蓄えた内部留保は2380万円(119万円×20年間)、解約金が800万円(40万円×20年間)となるので退職金は3176万円です。ここから退職金の所得税362万円を差し引くと手取りは2814万円となります。
今回はあくまで一例であり、会社の給与所得や不動産収入額によっては退職金として受け取る方がお得となる場合もあるかもしれません。
しかし、法人を維持するにあたりお金はかかります。そのため結論としては不動産収入を内部留保して「退職金」でもらうと手取りが減ってしまうと考えられます。ただし、3176万円を給料と同じ方法で課税した場合、税金が1200万円かかることから節税という点に関しては退職金として受け取ることは大きなメリットとなるでしょう。